「会社は利益追求を目的とした組織だから、大いに儲けてもらわないと困るよ」、と会社設立の会合で、私が信頼する税理士から、くどく言われました。宗教法人で始めた事業から利益が出すぎて、税法上問題になることを避けるために、収益事業を独立させて、会社組織にしたので、その誕生の由来から、個人の利益追求には程遠い性格をもっているのです。

私たちの会社の存立目的は、命を運ぶことにあります。「ヴィタ」はヴァイタリティーのヴィタで「命」の意味。「ポート」はポータブルのポートで「運ぶ」の意味です。それを重ねて、造語を作りました。会社のマークは、上に枯れ葉、下に若葉があり、その間にナナカマドの実が描かれています。枯れ葉に命を運ぶと、命を吹き返して若々しくよみがえり、豊かに実をつける。しかも、材質が堅くて腐朽しにくく、細工物によく用いられ、七度竈（かまど）にくべても燃え尽きない、というナナカマドの実をつける。それがこの会社で働く私たちの願いです。

この目的に沿って、ヴィタポートはいろいろな仕事をしています。低農薬有機栽培の果物から作ったジュース、ジャム、ワインや天然酵母・北海道産小麦を使ったパンは本物志向のお客様には絶大な人気ですし、無垢材を主体にして作った本格的な家具は世代を超えて使いこんでいただけます。また、低価格で心のこもったキリスト教の葬儀も引き受けます。

更に、印刷・出版事業やベテラン保健師たちによる経済効率優先でない理想的な在宅訪問看護も加わりました。今後も一層現代社会のニーズに鋭く素早く応えていきたい、と考えています。

この会社の大切なもう一つの特徴は、挫折して惠泉塾で立ち直った若者達の、社会参加のための働く場を提供することにあります。10年引きこもって青春を塗り潰した仲間に、心を病んで長く社会の軌道を外れた仲間に、何もかも嫌になって人生を諦めた仲間に、自分の手で働いて金を稼いで自活する晴れやかな気持ちを味わってもらうために、私たちは、愛し合う理想的な職場を提供したいと志しています。

そのためにも、忘れてはならないのが、大切なものの優先順位です。この会社ではキリスト教信仰が何よりもまず優先されます。聖書に基づく価値観が会社全体を貫き、人間関係も仕事内容も聖書に律せられます。次に職員の生活です。家庭をないがしろにして業績を上げる職員を私たちは喜びません。明るく健康な食卓を囲む心豊かな職員であってこそ、人に信頼される仕事をするものです。最後に職場の仕事です。聖書と生活の土台の上に据えられた仕事が、私たちヴィタポートの仕事なのです。